【更年期】眠れない夜の「心のざわつき」を鎮める:簡単マインドフルネス・瞑想で快眠へ
更年期に入り、「なかなか寝付けない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」といった睡眠のお悩みをお持ちの方は少なくありません。体の変化だけでなく、先のことを考えてしまったり、些細なことが気になったりして、心がざわついて眠りから遠ざかってしまうこともあるかもしれません。
このような更年期の睡眠トラブルには、ホルモンバランスの変化だけでなく、ストレスや自律神経の乱れ、そして「心の状態」が深く関わっています。特に、過去の後悔や未来への不安、頭の中を駆け巡る思考の渦は、脳を覚醒させてしまい、心地よい眠りを妨げる大きな要因となります。
本記事では、更年期に経験しやすい「心のざわつき」に寄り添い、穏やかな眠りへと誘うための手軽な方法として、マインドフルネスと瞑想をご紹介します。これらの実践がなぜ更年期の睡眠に有効なのか、具体的な手順とともにお伝えしますので、ぜひご自身の生活に取り入れてみてください。
なぜマインドフルネス・瞑想が更年期の睡眠に有効なのか
マインドフルネスや瞑想は、単にリラックスするためのものではありません。現在の瞬間に意識を向け、思考や感情を評価せずにただ観察する練習です。この練習が、更年期の睡眠の質向上に繋がる理由はいくつかあります。
- 自律神経のバランスを整える: 瞑想によって副交感神経が優位になり、心拍数や呼吸が落ち着きます。これにより、体が休息モードに入りやすくなります。
- 思考の反芻を減らす: 過去や未来について繰り返し考えてしまう「反芻思考」は、脳を疲弊させ、不安やストレスを増大させます。マインドフルネスは、これらの思考から距離を置き、「今、ここ」に注意を戻す訓練になります。
- ストレスホルモンを抑制する: 継続的な実践は、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制する可能性が示唆されています。
- 体の緊張を和らげる: 意識的に体の感覚に注意を向けることで、無意識のうちに力んでいた体の部位の緊張を緩めることができます。
更年期はホルモンバランスの大きな変化に伴い、心身ともに不安定になりやすい時期です。このような時期にマインドフルネスや瞑想を取り入れることは、心の揺らぎを受け入れ、穏やかな状態を保つ助けとなり得ます。
今夜から試せる!簡単マインドフルネス・瞑想の実践方法
ここでは、寝る前やリラックスしたい時に手軽にできるマインドフルネス・瞑想の方法をいくつかご紹介します。
1. 基本の「呼吸瞑想」(3〜5分)
最も基本的で、いつでもどこでもできる瞑想です。
手順:
- 楽な姿勢で座るか、ベッドに横になります。背筋は軽く伸ばし、肩の力を抜きます。
- 目を軽く閉じるか、視線を斜め下に向けます。
- 鼻から息を吸い、口または鼻からゆっくりと息を吐きます。呼吸のペースは自然に任せます。
- 意識を呼吸の感覚に集中させます。息が鼻腔を通る感覚、胸やお腹が膨らんだり縮んだりする感覚など、呼吸に伴う体の動きや感覚に注意を向けましょう。
- 呼吸から注意が逸れて、何か考え事が浮かんできても大丈夫です。「あ、考えていたな」と気づいたら、自分を責めずに、優しく注意を再び呼吸に戻します。
- これを3分〜5分、またはご自身が心地よいと感じる時間続けます。
ポイント:
- 完璧に「何も考えない」ことを目指す必要はありません。思考が浮かぶのは自然なことです。重要なのは、それに気づき、注意を呼吸に戻す練習をすることです。
- 最初は短時間から始め、慣れてきたら少しずつ時間を延ばしても良いでしょう。
- 「眠らなくては」というプレッシャーを手放し、「今、呼吸をしている自分」に注意を向けることを意識します。
2. 「ボディスキャン瞑想」(5〜10分)
体の各部位に順番に意識を向け、体の感覚に気づく瞑想です。体の緊張を緩めるのに役立ちます。
手順:
- ベッドに仰向けになり、手足は自然に広げ、体の力を抜きます。
- 目を閉じます。
- ゆっくりと呼吸を整えた後、意識を体の特定の部位に向けます。例えば、まず右足のつま先から始めます。
- 右足のつま先に意識を向け、そこにどんな感覚があるか(温かい、冷たい、ピリピリするなど)を観察します。何も感じなくても構いません。
- ゆっくりと意識を足の裏、足首、ふくらはぎ、太もも、お腹、背中、腕、手、肩、首、顔、頭頂部へと順番に移動させていきます。
- それぞれの部位で数回呼吸をしながら、その部位の感覚に丁寧に注意を向けます。
- 最後に、体全体に意識を広げ、体全体の感覚を感じます。
ポイント:
- 感覚を感じることに「良い」「悪い」といった判断を加えないようにします。ただ気づくだけで十分です。
- 特に緊張を感じる部位があれば、そこに少し長めに意識を留め、呼吸とともに緊張が緩むイメージをしても良いでしょう。
3. 「おやすみ感謝瞑想」(2〜3分)
寝る直前に、その日あった良いことや感謝できることに意識を向ける短い瞑想です。ポジティブな気持ちで眠りに入りやすくなります。
手順:
- ベッドに入り、楽な姿勢になります。
- 目を閉じて、呼吸をゆっくりと整えます。
- 今日一日の中で、小さくても感謝できることや良かったことを一つか二つ思い浮かべます。例えば、「美味しいコーヒーが飲めた」「誰かに親切にしてもらった」「お風呂が気持ちよかった」など、些細なことでも構いません。
- その出来事や感覚に意識を向け、感謝の気持ちを感じてみます。
- 感謝の気持ちとともに、穏やかな呼吸を数回繰り返します。
ポイント:
- 「感謝しなければ」と義務的に考えず、自然に思い浮かぶこと、心が温かくなることに注意を向けます。
- 無理に探し出す必要はありません。もし何も思い浮かばなければ、ただ静かに呼吸をするだけでも良いでしょう。
実践する上での注意点とヒント
- 完璧を目指さない: 最初から「無心になろう」「すぐに眠れるようになろう」と意気込む必要はありません。思考が逸れるのは当たり前です。優しく自分に気づき、注意を戻す練習こそが重要です。
- 継続が力になる: 瞑想の効果は、単発で行うよりも継続することで高まります。毎日決まった時間(寝る前がおすすめです)に短時間でも実践することを習慣にしましょう。
- 環境を整える: 静かで落ち着ける環境で行うのが理想ですが、難しい場合は耳栓をする、アイマスクをするなどの工夫も有効です。
- 音声ガイドやアプリを活用する: 初めての方や、一人で行うのが難しい場合は、市販の瞑想アプリやYouTubeなどで公開されている音声ガイドを利用するのも良い方法です。ガイドの声に導かれることで、迷わずに実践できます。
- 効果には個人差があります: 全ての人に同じように効果があるわけではありません。もし試してみて合わないと感じたら、無理に続ける必要はありません。他の快眠方法を試したり、医師に相談したりすることも大切です。
- 病状がある場合: 精神疾患などで治療を受けている場合は、瞑想の実践について事前に主治医に相談してください。
効果を実感するための目安と期待できる変化
瞑想やマインドフルネスは、劇的に睡眠時間が伸びる、といった即効性のあるものではないかもしれません。しかし、数週間から数ヶ月継続することで、以下のような変化を実感できる可能性があります。
- 寝る前に頭の中で考え事が巡ることが減り、心が落ち着きやすくなる。
- 「眠らなければ」という焦りや不安が軽減される。
- 夜中に目が覚めた時、以前ほどイライラしたり、すぐに眠ろうと焦ったりせず、落ち着いて過ごせるようになる。
- 日中の些細な出来事に動揺しにくくなり、穏やかな気持ちで過ごせる時間が増える。
- 体や心の小さな変化に気づきやすくなる。
これらの変化は、結果として睡眠の質の向上につながっていくでしょう。
まとめ
更年期における睡眠の質の低下は、体だけでなく心の影響も大きいものです。特に、眠ろうとしても頭の中で考え事が巡ってしまう「心のざわつき」は、多くの方が経験されるお悩みです。
マインドフルネスや瞑想は、「今、ここ」に意識を向け、思考や感情から距離を置く練習を通して、心の状態を穏やかに整える手助けとなります。ご紹介した「呼吸瞑想」「ボディスキャン瞑想」「おやすみ感謝瞑想」は、いずれも手軽に始められる方法です。
まずは一日数分でも構いません。ご自身のペースで、できることから毎日の習慣に取り入れてみてください。継続することで、寝る前の心が落ち着き、より穏やかな眠りへとつながる可能性が期待できます。
質の高い睡眠は、日中の活動の活力となり、更年期を心穏やかに過ごすための大きな支えとなります。ご自身を労わる時間として、マインドフルネス・瞑想を試してみてはいかがでしょうか。